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コラム

2011年地価調査発表


都市部の下落率は縮小

 

国土交通省がとりまとめた平成23年地価調査の基準地価(71日現在の価格)によると、全国の下落率は前年の3.7%から縮小し、3.4%の下落となっています。東京、大阪、名古屋の三大都市圏は住宅地1.7%と前年の2.9%、商業地2.2%と前年の4.2%から下落率は縮小しています。一方地方圏は住宅地3.7%、商業地4.8%の下落とほぼ前年並みの下落となっています。

 

上昇エリアも

 

下落が継続している地域が大半ですが、一部には上昇や横ばいに転じた地域もみられます。東京圏では東京スカイツリーの開業、東京ゲートブリッジの開通を控えた墨田区の商業地や大田区の工業地が下落から横ばいに転じています。また名古屋圏では地下鉄桜通線が延伸した緑区の住宅地が上昇に転じ、地方圏では九州新幹線が全線開通した福岡、熊本、鹿児島の商業地等で上昇となりました。

 

被災地では調査不能の地点も


東日本大震災の被災地では、岩手の住宅地4.7%、宮城の住宅地3.8%、福島の住宅地5.4%の下落となっており、下落率が拡大しています。なお今回の調査では、東日本大震災による津波や原発事故の被害が特に甚大であった地域では調査休止となった地点(86地点、3県の調査地点の約7%)があることに留意が必要です。調査休止の理由は国土交通省の資料によると調査不能、価格判定不能とのことですが、現地確認ができなかったり、取引が成立していないために価格の算定ができないことによるものと思われます。調査を休止した地点の地価はさらに下落していることが予想されますが、それらの地域の地価の把握には、市場において正常な取引が常態化することを待つことが必要でしょう。
 


湾岸と内陸で明暗


東京圏においても東日本大震災の影響により、震災前とは違う動きがみられました。湾岸部に位置する浦安市は都心に近い住環境の良好なエリアとして人気があり、2011年地価公示(11日現在の価格)では東京圏で数少ない地価上昇エリアでしたが、東日本大震災による液状化現象によって大きな被害を受け、半年経過した地価調査では、住宅地で7.1%の下落となりました。同じく液状化の被害が大きかった千葉市美浜区も5.2%の下落と下落率を拡大しています。なお浦安市では液状化の影響が甚大な地点(全12地点中7地点)は調査休止となっていることからも、液状化の被害の深刻さがうかがわれます。一方で内陸部に位置する武蔵野市、三鷹市、調布市等の東京都多摩地区は相対的な地盤の安全性が評価されており、下落率は縮小しています。


安全がキーワードに


湾岸より内陸部が好まれる傾向は東京圏だけでなく、東海・東南海・南海地震の発生が想定される地域等でもみられます。地震のリスクは日本全国共通であり、地震による液状化、津波等のリスクや洪水、高潮等の自然災害のリスクの少なさ「安全」が不動産を選別する際のキーワードになるものと思われます。